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砂の城 2016年8月6日(土)の築城レポート

4月の宮古島と同じプランで

 8月に入ると猛暑が襲ってきた。今年の築城は8月6日。見上げれば青空で白熱球と化した太陽が燃えている。4月の宮古島でひどい日焼けをし、腕や首の皮がベロベロにむけた笠井は、これに懲り、手首まで覆うパーカーを着て完全防備。波打ち際にスコップを打ち立て、皆の到着を待った。
 真っ先に現れたのは、意外なことに長井トシモト夫妻(トシモトは昨年末、タカヨちゃんと結婚した)。意外といったのは、最近、複雑富裕家庭・長井家で一大事件があり、恒例「ピンクダイナマイツ伊豆白浜合宿」にも来られなかったので、今回も不参加だろうと覚悟していたからだ。「いえいえ、一時は大変でしたが、俺自身には関係ないことなので、エッヘッヘ」と、思ったより明るいトシモト。横でタカヨちゃんも「フッフッフ」と含み笑いをしている。
 そうこうしているうちに、幸山副会長とパタ先生が到着。次いでトシモト社中のミキサー山田とイッサイ綿貫。さらに体調を崩して長期欠席を続けていたヤッチャン安田もやってきた。
 激しい日照りを避けるため、ビーチパラソルを2000円でレンタル。大きな砂堀り用ドリルを腰に下げたお姉さんがやって来て、ウォ〜ンと深い穴を掘り、パラソルを立ててくれる。ゴザも貸してくれたので、荷物を置き、女性軍が腰を下ろした。
 今年の城について、笠井には考えがあった。4月に宮古島で築城した「マルクスブルク城」と同じものを、江の島でもつくってみようというのだ(当サイト「宮古島の海開きイベントに呼ばれた!」を参照)。そのため、宮古島用に描いた完成予想図と、宮古島ドイツ村に建つマルクスブルク城の写真、現地でつくった砂の城の写真を参考用に持参した。それを見ながら大まかなイメージを共有し、いよいよ城づくりに取りかかる。

スコップを振るった “ アングリー・ヤングメン(怒れる若者)”

 土台づくりは社中の若い3人にまかせ、笠井・幸山は水運びなど脇役にまわる。ここでムリすると、老体は明日・明後日、大きなトラブルに見舞われること必定なのだ。
 3青年のがんばりで、土台はいつになく大きなものとなった。家族間の嵐に翻弄されたトシモトと、先日の就活で社会の理不尽に直面したイッサイ綿貫は、激しい怒りを込めて土羽打ちにスコップを振るい、それが山の上部をきわめて強固にするという、皮肉な結果をもたらした。「雨(なみだ)降って地固まる」とはこのことか?
 土台が大きくても、メインタワーはやや小さめ・細めというのが、マルクルスブルク城の特徴といえる。そのため、コップを多用して型どりを試みたが、どうもうまくいかない。今年の砂は、いつもと違って崩れやすいのだ。コップから出すと、表面が大きくひび割れていて、端のほうからボロボロ崩落する。なんとかごまかして上段を積み上げたが、満足できる仕上がりではなかった。
 正面の階段づくりはパタ先生にまかせた。そのため、階段用の砂を笠井がスコップで供給したが、いま思うと、その量が多過ぎたかもしれない。豊富な砂を使って、パタ先生は、城の正面から右方向へ斜めに降りる長大な階段をつくりはじめた。階段づくりがさほど得意でないパタ先生は、幸山副会長に教えを乞い、まずまずの形にすることができた。

 中層の広場では、タワーから両翼に延びる切妻屋根の建造物に手こずった。この辺りは、次の大仕事が気になり、ともすれば手を抜きたくなるところである。担当者もはっきりせず、出来が悪いので途中で破棄されるなどして、最後まで良い形にならなかった。宮古島の同じ部分と比べても、ここは明らかに劣っている。
 マルクスブルク城の特徴であり、砂でつくるのがむずかしいのが、中段の斜めに切れ落ちる瓦屋根と、そこに設けられたいくつもの出窓だ。宮古島でも、ここはどうにかごまかした部分で、あまり良い出来ではなかった。この難所に挑んだのが、久々に参加したヤッチャン安田。面倒な作業に粘り強く取り組み、まずまずのカタチにしてくれた。
 トンネル大好きのトシモト社中は、後方に回廊を延ばし、下部に大きなトンネルを掘り始めた。崩壊するとダメージが大きいので、従来は避けてきたことだが、社中はコツをつかんだようで、美しいカタチに仕上げた。

大きくて頑丈な下部構造

 土台が大きかったため、いつもより手間取ったが、それでも4時前には完成させることができた。細部にいろいろな工夫があり、全体的には、非常に良い出来だったと思う。ただ、めざしたマルクスブルク城とは、かなり違ったものになってしまった。最大の理由は、正面の階段が長大になってしまったことだろう。しかも斜めに延びている。そもそも笠井が大量の砂を供給したのが原因であるし、制作中も、充分わかっていながら容認したのだから、パタ先生には何の落ち度もない。
 さて、無事に完成し、集合写真やいろいろなお遊び写真などを撮っているうちに、潮が満ち、波が城の足元に近づいてくる。「すばらしいタイミングだ。まもなく崩壊シーンが見られる!」と誰もが思った。ところが、ぎりぎり足元まで打ち寄せて、下層部分は洗い流されているのに、上層がびくともしない。「大き過ぎたか」「頑丈に固め過ぎたか」との声が上がる。
 1時間近くも待ったが大きな変化がないことにたまりかね、笠井がちょっとズルをする。波を導入する水路を掘ったり、城の土台に穴をあけて、崩壊を促進するのだ。それでも城は持ちこたえている。なんという強度だろう。
 だが、待つこと15分ほど。突然のように大波が寄せ、メインタワーが波間に崩れ落ちた。あわててシャッターを切るが、すでに遅し。誰か撮影に成功した者がいただろうか? 知る限りでは、いないようだった。

 「あと1メートル前だったかな?」「今回はバッチリと思ったんだが…」と、笠井&幸山が反省する。築城の位置決めが難しいのは、場所だけでなく、土台の強度も勘案しなくてはならないのだ。今年もまた、いくつかの課題を残して、作業は終了したのだった。
 江の島の漁師町にある、知る人ぞ知る穴場料理店「きむらや」で打ち上げをしようと足を伸ばしたが、残念ながら2階は団体による予約済。1階に全員は入り切らないと断られたため、島内のガーデン・レストラン(というか、ただの庭先テーブル席)でビールを酌み交わしながら、楽しかった一日の余韻に浸ったのであった。

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砂の城ムービー(撮影:Pata . Yasuda)
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砂の城メンバー16

 

Text:N.Kasai

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